太陽光発電の設置は火災の原因になる?火災保険についても知っておこう
環境にやさしく光熱費の削減にもなる太陽光発電は、メリットが多いように思われがちです。しかし、千葉県内でも水上メガソーラーから出火したように、デメリットがあることも忘れてはいけません。そして、火災のリスクとは家庭用太陽光発電でも無縁ではないのです。この記事では、火災が発生した事例や原因、対策について紹介しましょう。
太陽光発電システムが原因で火災が発生した事例がある
2019年9月、千葉県市原市の「千葉・山倉水上メガソーラー発電所」から火災が発生しました。台風15年による強風で、太陽光発電パネルを固定する架台が押し流され破損し、複数の箇所から炎と煙が発生したのです。原因は架台が流されないようにするために、湖底に止めておくアンカーが、台風による強風で抜けたこととされています。
一方、家庭用太陽光発電は水上メガソーラーとは異なり、パネルを浮かべておくわけではありません。架台は屋根に固定するため、火災は起こらないと考えがちです。しかし、家庭用太陽光発電でも事故は起こっているのです。
家庭用太陽光発電でも火災は発生する
消費者安全委員会によると、家庭用太陽光発電システムが原因の事故(加熱、発煙、出火など)は、2008年3月から2017年11月の間に72件発生しています。太陽光発電協会によると、2017年の家庭用太陽光発電の導入件数は約237万8,000件となっているため、発生率は約0.003%と計算できるでしょう。同期間の家庭用太陽光発電の原因不明のトラブルも含めると127件となり、発生率は約0.005%まで上昇するのです。
なぜ太陽光発電システムで火災が起こるのか
家庭用太陽光発電システムによる火災の原因は「パワーコンディショナーや接続箱」と「パネルやケーブル」の2つにわけられます。家庭用太陽光発電の72件の事故事例のうち、前者が原因のものは59件、後者は13件となっているのです。
パワコンや接続箱が原因の事故
独立行政法人・製品評価技術基盤機構(nite)によると、パワコンや接続箱の事故の多くが、製品トラブルと施工不良が原因となっています。製品トラブルでは、パワコンのはんだ付けや絶縁不良が事例として報告されているのです。コンデンサーやトランスなど、発熱しやすい部品が多く使われていることが原因といえるでしょう。
導入時に信頼できるメーカーのものを選んだり、耐用年数が経過したものは早めに買い換えたりするのがよさそうです。また施工不良では、屋外配線をつたってパワコン内に雨水が侵入し、トラッキング現象が発生したというものがあります。これは、配線をカバーする配管に水抜き穴を施工しなかったことが原因です。対策としては、信頼できる設置業者を選ぶしかないかもしれません。
パネルやケーブルが原因の事故
「小動物が噛んだと思われる跡があった」「施工時にケーブルの挟みこみがあり、劣化した個所があった」などは、ケーブルが原因となった事故の例です。いずれも、施工時の工夫や正確な作業で事故を防ぐことができるため、信頼できる設置業者選びが重要といえます。また、ケーブルも含めた定期的な点検が必要になるでしょう。そして太陽光パネルが原因となる事故を分析すると、設置の方法によっては火災のリスクが高いものがありました。
それは「銅板等なし型」と呼ばれるもので、可燃物であるルーフィングに直接架台を取り付けてしまっている方法です。他の方法では架台とルーフィングの間に、瓦やスレートなどの燃えない屋根材が入ったり、ルーフィングの上に銅板などの不燃材を引いたり、架台に銅板が付帯していたりと、燃えにくい工夫がなされているものでしょう。しかし「銅板等なし型」のみ、架台とルーフィングの間に何も施工されていないため、火災が発生しやすくなっています。銅板など不燃材を挟みこむ改良工事を行い、定期的な点検が必要です。
事前に加入しておきたい火災保険
太陽光発電の火災を防ぐには、信頼できる業者を選んだり、定期点検を行ったりといった方法に加えて、火災保険に加入するのもよいでしょう。その際の注意点は、太陽光発電システムが原因の火災も保障の対象となっているかどうかです。
すでに火災保険に加入している家に太陽光発電を追加した場合は、対象外となっているケースも考えられるため、保険の内容を確かめておかねばなりません。新たに保険に加入しなおすなら、台風など自然災害による太陽光発電パネルの破損や盗難もカバーできるものを選ぶとよいでしょう。
太陽光発電が原因の火災は、確率が低いとはいえ実際に起こっています。火災を起こさないために大切なのは、信頼できる設置業者を選ぶことと定期点検を怠らないことです。また、火災が起こってしまった場合に備えて、太陽光発電も対象内となっている保険に加入しておくことも大切といえます。その際には、自然災害が原因で太陽光発電が破損した際もカバーできるものを選んでおけば、より安心できるのではないでしょうか。